生誕200年ミレー展:山梨県立美術館
山梨県立美術館は「ミレーの美術館」として知られています。〈種をまく人〉〈落ち穂拾い、夏〉などの優れたコレクションがあります。
ミレー生誕200年に当たる今年、山梨県美は「ミレーの美術館」として、時間をかけ周到な準備をしてこの特別展を開いたことがよくわかる特別展でした。
出品作品85点のすべてがミレーの作品です。ミレー22歳の時の作品から晩年の71歳にいたるまで、ミレーの画業のほぼすべてに及ぶ年代の作品が網羅されています。
全体が4つの章に分かれています。第1章:プロローグ 形成期
第2章:自画像:肖像画 第3章:家庭:生活 第4章:大地・自然。
第1章では〈アルカディアの羊飼い〉などの模写や〈男性の裸体習作〉などミレーが絵画の基本を忠実に学んだことを示す作品が印象に残りました。20代に確かな技術を習得しています。
第2章では〈自画像〉が目に付きました。生涯に数枚しか書かなかった自画像の1枚で27歳の時の作品です。本格的に画家として歩み始めようとする時の自分のやや不安な思いが表情に表れています。この章では病死した最初の妻オノやその一族など様々な肖像画が出品されていますが、いずれの作品も肖像画としてすぐれた技量が発揮されており、ミレーが特定の分野に限らず総合的に評価の高い画家であることがよくわかります。
第3章と第4章では、ミレーの家族や周辺の人物、故郷やバルビゾンの農民や農村の人々、そして風景を描いた作品を特集し、ミレーの「愛しきものたちへのまなざし」を感じさせる展示となっています。
〈種をまく人〉は3枚出品されています。油彩画2枚のうち1枚は個人蔵の小品、もう1枚はウェールズ国立美術館蔵の作品で、よく知られている〈種をまく人〉とは構図が異なります。残る1枚はリトグラフです。
もっとも有名は〈種をまく人〉は特別展ではなく、ミレー館の常設展で観ることができます。20日に名古屋ボストン美術館で観た作品とほぼ同じ構図です。この2枚のうちどちらが先に制作されたのか…諸説があるようですが定説にはなっていません。この作品を含め、山梨県美のミレー作品やロラン・ターナー・コロー・クールベなどのコレクションはみごとです。
今回出品された85点のうち21点が山梨県美のコレクション、そのほかはトマ=アンリ美術館(フランス)25点などフランス29点、アメリカ7,イギリス4,国内美術館9,個人蔵9など幅広く出品されており、山梨県美の努力が感じられます。
生誕200周年にふさわしい特別展でした。入場者は8月12日に2万、16日に3万、21日に4万…私が出かけた22日もかなり混雑していて駐車場はほぼ満車でした。
会期は8月31日までです。
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