二つの優れた美術展:①佐伯祐三とパリ展
静岡市内で同時開催されている二つの美術展を「ミレーの会」の10人で観てきました。どちらも優れた企画で内容の充実した出色の展覧会でした。
[佐伯祐三とパリ]:静岡県立美術館
佐伯祐三(1898-1928)は大正から昭和初期にかけて、個性豊かな画風で近代日本洋画の世界で注目された画家です。惜しくも満30歳という若さで結核のためパリで亡くなりました。
今回の展覧会には、国内で最大のコレクションを有する大阪新美術館建設準備室から58点(内、寄託5点)の佐伯作品が出品されています。
58点の作品は東京美術学校在学中の1920年から最晩年の1928年までですが、全体の3分の1以上の18点が亡くなった1928年1月から8月までの作品です。この18点からは魂を燃焼し尽くした佐伯のすさまじい執念を感じることができます。
1924年1月-26年1月と1927年8月-1928年8月までの2回3年間パリに滞在し、制作に没頭しました。出品作のほとんどはパリで制作されています。
(画像をクリックすると拡大します)
少し傾いた柱、椅子や机の脚の曲線、壁面の文字など佐伯特有の描写です。客は一人の男性だけ。
二段目㊧=〈郵便配達夫〉1928年:たまたま配達に来た郵便配達夫をモデルにして一気に描き上げた作品。一見ゴッホの絵を思わせます。
最後の年には既に死期が近いことを悟っていたのかもしれません。1日に3枚も4枚も制作したということです。
パリの街角を多く描いた佐伯にはヴラマンクやユトリロの影響も見られますが、佐伯の作品は彼らの作品とは違う独特の個性豊かな表現が大きな魅力になっています。
わずか10年足らずの制作活動で日本洋画史に残る名作を次々と世に出した佐伯祐三の画業を振り返る優れた企画の展覧会でした。
会期は明日25日までです。
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