竹内栖鳳展:国立東京近代美術館
サブタイトルは’近代の本画の巨人’です。竹内栖鳳(1864-1942)は明治・大正・昭和を通じて東の大観・西の栖鳳と称せられた文字通り近代日本画の巨匠です。
今回の展覧会は本画116点と素描・書簡など64点で栖鳳の全画業を通観しようとする大規模な企画展です。
前期には本画71点と素描など47点が出品されています。
第1章 画家としての出発
京都で四条派に弟子入りして修行を始めました。厳しい修行の中で的確な技術を習得していったことがわかります。
〈芙蓉〉は18歳の時の作品ですがみごとな技術で描かれています。雪舟などの模写や虫・鳥などの写生帖からは若くしてすでに卓越した技術を読み取ることできます。
第2章 京都から世界へ
1枚の絵に四条派だけでなく円山派や狩野派などの技法を使って制作した作品について、それを「鵺(ぬえ)派」と称して非難する動きがありました。それは一方では新しい日本画を生み出す動きでもありました。1900年、パリ万博の視察で渡欧した栖鳳は西洋絵画に触れて、帰国後、西洋の写実に対象の本質に迫る日本画の特質を融合させる作品を制作します。
ここでは獅子・虎・狐・象などいろいろな動物が登場します。無数の毛1本1本まで忠実に描かれていますが、単なる写実ではなくそれぞれの動物の一瞬の動きをとらえ、その本質に迫る描写で見る者に迫ってきます。
第3章 新たなる試みの時代
美術学校や画壇で指導的な立場にあった時期…若い画家たちを指導しながら山水画や人物画に新しい手法を取り入れた作品を制作しました。
六曲一双の〈羅馬之図〉は日本画には珍しい古代ローマ遺跡を題材として新しい手法で描かれています。
〈絵になる最初〉や〈日稼〉では伝統的な日本画のテーマとは違う新しい視点での人物描写が印象に残ります。裸婦の素描も数点あります。
国内だけでなく中国やヨーロッパを旅した時の写生帖も楽しみです。
この展覧会のポスターやパンフレットなどに登場してもっとも注目されている〈斑猫〉はこの時期の作品ですが、後期(25日)からの出品で残念ながら見ることはできませんでした。参考までに…・。
第4章 新天地を求めて
昭和の時代、湯河原と京都を行き来しながらさらに新しい作風を探求します。栖鳳が没した1942年の作品まで集大成とも言える晩年の作品は衰えを感じさせません。
特集として「水」というモティーフを手がかりにして栖鳳の写生に迫る「水の写生」コーナーがあります。
新しい日本画を生み出した栖鳳の絵の変遷、日本画の伝統を重んじながらも常に新しい技法を追い求めた巨匠の歩みを十分に味わうことができる優れた展覧会でした。
主な作品は展覧会の公式HPでどうぞ
http://seiho2013.jp/
会期は10月14日までです
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