「レオナール・フジタとパリ」展:静岡市美術館
日本の洋画家としてはパリでもっとも著名であり、また作品の価格が最も高いと言われるレオナール・フジタ(1886-1968)の絶頂期の作品をを中心とする特別展です。展覧会のサブタイトルは「藤田嗣治 渡仏100周年記念」。「パリを震わせた異邦人-裸婦と猫の画家、素晴らしき乳白色」…パンフレットはフジタの魅力を端的に表現しています。
フジタの作品85点は5章で構成されています。
第Ⅰ章:渡仏以前-画家への道
14歳の時の作品《にわとりとタマゴ》ではすでに確かな技術を発揮しています。
東京美術学校の卒業制作《自画像》は強い意志を抱いた自分を表現しています。
パリに向かう船中で最初の妻・とみ宛てに書いた書簡が展示されています。写真や絵はがき、スケッチなどを興味深く見ることができます。
第Ⅱ章:模索への時代-パリの潮流の中で
渡仏した翌年の1914年、フジタはピカソのアトリエを訪ねます。その後ピカソを尊敬し影響を受けることになります。また、ピカソのアトリエにあったルソーの絵を見てその影響を受けることになります。
第Ⅲ章:成功への階段-パリ美術界へのデビュー
モンパルナスのカフェなどで、ピカソ、モディリアーニ、パスキン、キスリング、ジャン・コクト-など様々な芸術家との交流が始まります。日本画の趣のある作品=《春(扇のための図案》や《碁を打つ人々》、ルソーの影響を受けた《マラコフ風景》などがあります。
横顔の女性を描いたいくつかの作品はモディリアーニの影響でしょう。
第Ⅳ章:栄光の時代-エコール・ド・パリの寵児
1920年から30年にかけての黄金期の作品です。日本画と西洋画の伝統を融合させた作風は高く評価され、フジタの描く独特の「白い乳白色の地」の絵肌は絶賛されます。《五人の裸婦》(1923)は黄金時代の代表作の一つでピカソも賞賛しました。同じ頃に制作された《裸婦》や《横たわる裸婦》などにも「白い乳白色」が用いられています。この章では、当時の画家20人余の作風を模して《…風に》と題した作品も展示されています。《ゴーギャン風に》《ルノワール風に》《ロダン風に》などいずれもそれぞれの画家の特徴を見事にとらえて表現した小品です。ここには「ピカソ風に」はありません。尊敬したピカソを模した作品を描くのは遠慮したのでしょうか。
第Ⅴ章:新たなる旅立ち-マドレーヌとともに
1931年、フジタはパリを立って南米に向かいました。《眠れる女》は黒を背景にして「白い乳白色」がひときわ鮮やかに見えます。
最後は「藤田が交遊した芸術家たち」の作品です。
ピカソ、ローランサン、モディリアーニ、ルソー、キスリングなどの作品約30点です。
フジタが最も華やかだった20代後半から40代半ばにかけての黄金時代の作品を中心とする展覧会で見応えがあります。
1940年日本に帰ったフジタは間もなく始まった戦争のさなかで戦争画の大作を描きます。戦後そのことを強く批判されたこともあり、1955年フランス国籍を取得しその後1968年に没するまで二度と日本の土を踏むことはありませんでした。
フジタと猫
フジタの作品には猫が登場する作品が多くあります。今回も《五人の裸婦》《眠れる女》《猫》《黒猫と虎猫》などにネコチャンが描かれています。
入り口で猫の画像などを見せるとカンバッジをくれます。私はわが家のレーチェのブログ画像を見せてこれをいただきました。「フジタと猫」です。
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