国内で唯一の史伝作家:磯田道史先生
静岡文化芸大の磯田道史先生の今年初めての授業がありました。昨年からの続きで言えば明治維新の時代の歴史についての授業のはずでしたが、開口一番「自分は歴史学者であると同時に文学者である。今日は文学者としての話をする」として歴史文学の話をされました。
歴史文学を大きく分けると、時代小説・歴史小説・史伝の三つになる。もっともフィクション性が強く、史実から遠いのが「時代小説」でその代表は山本周五郎や山本一力、浅田次郎。
史実に忠実な「史伝」は森鴎外、吉村昭。吉村昭亡き後、今史伝の作者は自分しかいないとのこと。
「史伝」と「時代小説」に中間が「歴史小説」で司馬遼太郎や藤沢周平など。司馬遼太郎の作品を読むと歴史がわかるという見方もあるが、司馬作品は「歴史」そのものではない。『竜馬がゆく』で『龍馬』としなかったのは司馬遼太郎が自分の作品にフィクションの部分があることを意識したのであろうとのこと。
以上の前置きの後、磯田先生は昨年10月25日に刊行された著書『無私の日本人』を例にあげて史伝作家としての執筆のノウハウを古文書の資料を配付して説明されました。
『無私の日本人』の中で取り上げた穀田屋十三郎について、東大農学部図書館で見つけたという『國恩記』の原文と先生が書かれた文を対比して説明されました。ごく一部に創作補足があるものの、ほぼ忠実に原文を現代語で表現してあることがわかりました。 まさに「史伝」です。
膨大な古文書を解読して史実を明らかにされている磯田先生の魅力が今日の授業でさらによくわかりました。今期の授業はあと2回です。
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