ジャクソン・ポロック展
「ピカソを越えた男」とも言われる20世紀アメリカ最大の画家の一人であるポロック(1912-1956)の生誕100年記念展です。
ポロックは床の上に置いたキャンバス一面に、ポーリング(塗料を流し込む技法)やドリッピング(滴らし)、スパタリング(撒き散らし)などの技法によって、無数の線や点などで構成するまったく具象の形のない新しい絵画を制作しました。
ポロックはピカソやミロの影響を受けながらもその二人ともまったく異なる新しい抽象表現主義の絵画の動向を決定的にしました。ポロックはピカソについて「くそー、、あいつが全部やっちまった。いったいどうしたらいいんだ」と言ってピカソの画集を投げつけたことがあったということです。しかし、そのピカソを超える画家としての評価を受けることになります。今回は出品されていませんが、《№5 1948》は2006年に165億円で売買され、絵画1点の史上最高額と報じられました。
従来にない抽象表現の作品はアートの世界で評価が大きく分かれました。1949年、
「Life」誌が特集記事「ジャクソン・ポロック-彼はアメリカで最も偉大な現存画家か?」が掲載されましたが、このとき500人中490人がポロックに否定的であったということです。
今回の展覧会には国内で所蔵されているポロック作品の全て28点が出品されているのが大きな特徴です。さらに海外の美術館などが所蔵する36点が加わって全64点。生誕100周年にポロックを回顧するまたとない機会です。
出品作の中にはポロックの絶頂期の最高傑作と言われる《インディアンレッドの地の壁画》(1950年)がテヘラン現代美術館から出品されています。
ポーリング・ドリッピング・スパタリングなどの技法によって制作された傑作です。無意識性や偶然性を重視しながら実は偶然ではなくコントロールされていてみごとなアートになっていることがわかります。キャンバスに描かれた絵画というよりは壁画に近い新しい絵画の世界です。183㎝×244㎝のこの大作は1976年、パーレビ国王時代のイランのコレクションになりました。国外への貸し出しは今回が初めてだということです。
大手オークション会社による評価額は約200億円とか。まさにピカソを超えた評価です。
日本に最初に紹介されたのは1951年の読売アンデパンダン展です。《№7 1950》と《№11 1949》の2作品でいずれも今回出品されています。《№11 1949》はこの年の雑誌「みずゑ」の表紙になっています。
《№7 1950》
ポロックは15歳の頃から飲酒をはじめ、やがてアルコール依存症によって精神科の治療を受けることになります。精神分析や治療は25歳の頃から44歳で亡くなるまで断続的に続きます。20歳前後に描かれた《自画像》や家族を描いた《女》は鬱屈した画家の精神を思わせます。
アルコールに冒され、常に新しい作風を求めて苦悩するポロックは3-5年ごとに表現を大きく変えていることがわかります。評価が低下してきた晩年、飲酒して乗った車の事故で亡くなったのは44歳の時です。全体を通じて生きる喜びよりも苦悩や悲しみを感じたポロック展でした。
愛知県美術館で 1月22日まで。2月10日からは東京国立近代美術館で
ポロックランチ@ウルフギャングパック レストラン
美術館と同じフロアにあるカリフォルニア料理のレストランでは展覧会にちなんで特別メニューのランチが用意されています。
具たくさんビストロサラダ 骨付き鶏モモ肉のグリル バニーバルサミルソース
㊧:抹茶風味 New York チーズケーキ ポロックのポーリングを思わせる抹茶ソース
㊨:庭園の奥が美術館。10階の庭園です
ランチはチケット呈示で2000円→1500円。美味でボリュームたっぷりのランチでした。
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