空前絶後の「写楽」展
昨日携帯で速報した「写楽」展の詳報です。
写楽が28図の大首絵を一挙に出版してデビューしたのが寛政6年(1794年)5月のこと…それからわずか10ヶ月後に忽然と姿を消すまでに残した作品は146面が確認されています。今回の特別展ではそのうち142図、約170枚の写楽の作品が出品されています。今回出品されなかったのは4図でそのうち2図は現在行方不明、1点は公開しないことになっている作品、最後の1点は現在国内の浮世絵展で公開中。ということで写楽の全作品がほぼ完璧に網羅されたというまさに空前絶後の「写楽」展です。ただし、前期と後期に分けて出品される作品もあります。
東京国立博物館をはじめ国内の美術館のほか、メトロポリタン、ホノルル、シカゴ、ボストン、ハーヴァード大学、フランス・ギメ東洋美術館、アムステルダム国立美術館など世界各地の美術館から出品されています。
全体は5部で構成されています。
1 写楽以前の浮世絵
菱川師宣、勝川春章、北斎、歌麿など。重文3点。
2 写楽を生み出した蔦屋重三郎
写楽の役者絵のプロデューサーであった版元の蔦屋重三郎がかかわった浮世絵作品。18面のうち半分は歌麿が女性を描いた作品です。
3 写楽の全貌
ここで写楽の全貌が明らかになります。写楽の作品だけの展示で159面もあります。写楽の全作品数よりも多いのは、同じ作品を2面3面と並べて展示している作品がかなりあるからです。所蔵先が異なる作品、刷りの異なる作品、保存状態の異なる作品など…。保存状態によって色合いが大きく異なるこおtがよくわかります。
ここでは写楽の画業を4期に分けてそれぞれの特徴がよくわかるように展示されています。
第1期は28図の大首絵の時期。写楽の役者絵がもっともその特徴をよく表しています。
第2期は役者の顔のアップではなく全身像を背景のない状態で描いたもの。38図
第3期は背景が雲母(きら)でなくなっています。細判の全身像や間判の大首絵など。
背景に小道具や情景が描きこまれています。ただし、第1期に比べると形式化して役 者一人一人の個性が希薄になっている感じです。
第4期は最後の時期で残された作品は芝居絵10図と相撲絵2図だけです。数が少ないだけでなく写楽の強烈な個性が消えています。
わずか10ヶ月の間に作風が大きく変わったのはなぜでしょうか。大きな謎です。
4 写楽とライバルたち
写楽が描いたのと同じ役者を描いている豊国や春英などの作品と並べて展示して写楽の特長がよくわかるようになっています。
5 写楽の残映
写楽の影響を受けた栄松斎長喜らの作品
全出品作品は260点という大量の点数で見るのに時間がかかります。私が見たのは8日(木)の開館直後の時間帯でした。チケット売り場も平成館の入り口も行列はなかったのですが、館内はかなり混んでいました。作品が小さい上に、見る人の目線の高さに展示されているので絵に近寄って見ることになります。かなり疲れました。
写楽のすべてがわかると言ってもいい充実した内容の展覧会でした。会期は12日まであと3日です。
写楽とはだれなのか…いろいろな説があります。一番大きな謎はこのことかもしれません。
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