映画「パリ20区、僕たちのクラス」 2008カンヌ映画祭最高賞受賞
少々寝不足で出かけたのですが映画が始まったとたん眠気は吹っ飛んだままで緊張のうちに2時間が過ぎました。
パリ20区にある中学校のあるクラスの1年間のドラマです。生徒は24人。フランス、中国、マリ、アンティル諸島など出身国が異なる多国籍の生徒たち。落ち着きがなく、教室の中は雑然としています。教師の指示に素直に従わず時には反抗的な態度を示す生徒たち。
このクラスの担任のフランソワは国語の教師です。コミュニケーションの道具としての国語をしっかり教えようといろいろ工夫しながら授業を進めますがなかなか思ったとおりに進みません。
クラスはまさに「学級崩壊」寸前の状況に至ります。授業中にフランソワに逆らい、教室を勝手に出て行く時に女生徒にけがをさせたスレイマンは退学処分になります。フランス語を話せない母親は現地語で息子スレイマンを弁護します。担任のフランソワは彼を学校に残そうと主張したのですがかないません。
スレイマンの処分を決める懲戒会議に生徒代表の出席が認められているのには驚きました。その会議中に代表の二人の生徒は私語をしながら大笑いしているだけです。処分の決定は投票によって行われました。投票用紙が1枚ずつ透明の大きな箱に入れられます。このあたりも日本では見られない状景でした。
生徒の日常生活の乱れを直すために「点数制」を導入しようという議論が展開される場面がありましたが、静岡県内でもいくつかの学校で点数制を導入して、ルールに違反した場合は持ち点から減点するという指導を行っています。それが本当に生徒の心に響く「教育」なのか、疑問ですが。
担任が生徒、保護者と面談するいわゆる「三者面談」の場面もありました。この場面は日本とよく似ています。
フランソワは真正面から生徒に向かい、懸命に指導に当たります。しかし、ちょっとした言葉遣いから生徒や保護者に不信感を抱かせる過ちをおかすこともあります。
教材に工夫があって興味を引きました。これまでに自分が学んだことをそれぞれ述べる場面。その中でふだんちょっと問題があると思われた女子生徒が意外にもプラトンの「国家」を読んだということで、その一部を披露したのには感心しました。
生徒に各自の自己紹介を書かせるという課題を与えたフランソワは学年の最後の時間に生徒の写真を添えてその課題を一人一人に渡します。
スレイマンの退学という悲しいできごとはあったものの、フランソワと23人の生徒はこの1年間に確実に成長していました。校長をはじめ先生たちが生徒と一緒にフットボールを楽しんでいるラストシーンにホッとしました。
担任を演じたフランソワは教師経験がある作家でこの映画の原作となった「教室へ」の原作者でもあります。プロの俳優ではありません。24人の生徒はパリ19区の中学校の生徒から選ばれたアマチュアです。
彼らの迫真の演技はこの映画を一見してドキュメンタリーと思わせるほど見事で説得力があります。
2008年の第61回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞しました。
浜松 シネマe~raで 2/4までは15:40から 2/5からは10:00から
映画の公式サイトはこちらです。
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