薪能「望月」:静岡文化芸大創立10周年記念
文化芸大恒例の薪能は今回で10回目になります。創立2年目から行われている伝統行事です。学生が企画し、運営しているのが大きな特徴です。
記念すべき今年の薪能のプログラムは次のとおりです。
狂言 蝸牛
仕舞 雲林院
実盛
(休憩)
(火入れ)
能 望月
休憩の後の火入れは大学の文化・芸術研究センター長である作曲家の三枝成彰さんと学生代表によって行われました。時間は7時過ぎ。秋の日はすっかり暮れて赤々と燃える炎が鮮やかに舞台を照らしていました。
「望月」は夫(父)を殺された母子が昔の家来と共に一計を案じて仇を討つというストーリーで、劇的な展開を楽しむことができます。物語のおもしろさだけでなく、母親が曾我兄弟の仇討ちの話を謡い、子どもが鞨鼓(かっこ)を打ち、家来が最後に獅子を舞うという三つの芸をたっぷり楽しむことができます。
宿の主人を務めるシテは文化芸大の梅若猶彦教授です。梅若先生は能楽師であり多くの能楽で自ら演じる傍ら、劇作家や演出家としても活躍されています。大学では演劇史や芸術表現などを担当されています。著書に岩波新書の「能楽への招待」などがあります。大学にこのような先生がいらっしゃるというのは学生にとって幸せなことです。
母の役ツレは生一(きいち)知哉、子どもを演ずる子方は知哉の子の生一庸です。現在大阪の小学校6年生。りっぱな演技でした。能の役者はこのようにして子方を務めながら成長していくのですね。
母子と敵役が同じ舞台の上にいて観客にはすべて見えていても、役者達には相手のことが見えていないという能独特の約束事がよくわかります。
最後は酒を飲み過ぎて油断した仇の望月を討ちめでたく本望を遂げることになります。
この日の舞台は大学2階の芝生広場に設営されました。涼しい夜風が頬を打ちます。空にはお星さまとその間を往来する国内航空便のライトが見えています。
大学の近くに総合病院があるため、救急車のサイレンが何度か響き渡りました。野外ですから仕方ありません。観客は約400人。
企画から舞台の設営、当日の運営などすべてを学生が担当しました。全員が入学後半年の1年生ということで感心しました。
薪能は今や文化芸大の貴重な財産と言っていいと思います。
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㊧:当日昼休みの会場を客席の後ろから見たところ。中央奥がステージ
㊨:当日のプログラム表紙(右)
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