演劇「東京原子核クラブ」
浜松出身(しかも私の子どもたちの中学校の先輩)のマキノノゾミの作です。マキノはこの作品で1997年度読売文学賞を受賞しました。
不思議な題です。舞台は「東京」。理化学研究所の「核物理学研究室」。クラブは「下宿屋の仲間」。ということでしょうか。
昭和7年、東京本郷の下宿屋「平和館」で生活する理研の研究者を中心とする若者たちの群衆劇です。舞台は正面に下宿屋の玄関とホール、1階に3室、2階に4室。それぞれ下宿人の名札がかかっています。下手は母屋への通路、上手にはトイレのドアなど。最後の部分では空襲の被害を受けた姿になっています。
中心人物は若き物理学者友田です。下宿人は友田の同僚2人のほか、銀座のダンスホールのピアノ弾きの男、謎のダンサー、新劇青年、東大野球部員など個性豊かなメンバーです。1幕ではこれらの下宿人や大家とその娘が繰り広げる様々なドラマが笑いを誘いながら展開されます。
友田は世界の最先端を行く研究が認められてドイツに留学して帰ってきます。
時代は太平洋戦争の時代に進みます。野球部員とその友人は戦死。ダンサーとピアノ弾きは満州へ。新劇青年は特高に捕まります。
第2幕では一転して原子爆弾の発明をめぐる話が主題になってきます。友田は物理学者として原爆の可能性を認めていましたが、莫大な経費と時間がかかることから当分先のことと考えていたのですが、広島と長崎に投下されことで衝撃を受けます。
劇中では原爆をめぐる議論、科学者の責任をめぐる議論も展開されますが、声高に責任を問う場面はありません。
友田は1965年にノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎がモデルです。
理研、下宿屋、原爆という設定で戦前から戦後にかけての時代の流れを巧みに描いた群衆劇として興味深く観ることができました。
5月24日 アクトシティ大ホール 俳優座劇場プロデュース
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