ラファエロとカラヴァッジョ・・「ボルゲーゼ美術館展」
ボルゲーゼ美術館はローマ市の北東部にあります。17世紀前半に名門貴族ボルゲーゼ家のシピオーネ=ボルゲーゼ枢機卿が夏の離宮として建てさせたものです。
シピオーネが収集した数々の美術品の中から15世紀~17世紀の油彩画を中心とした作品48点が出品されています。美術史ではルネサンス後期からバロックの時代です。
この展覧会のポスター、図録、看板、チケットなど全ての媒体で使っているのがラファエロの《一角獣を抱く貴婦人》です。20代前半の制作とされていますが、高度な技術で完成された作品だと思います。二本の円柱の中の三角形の構図は安定しています。この構図についてはレオナルドの《モナリザ》の影響を指摘する人もいます。描かれている女性は表情や服装などからして題名のとおりまさに「貴婦人」です。結婚のお祝いとして描かれた作品だということです。一角獣(ユニコーン)は20世紀の修復によって表れたものでそれまでは車輪を持っている図柄の絵でした。
もう一つの注目すべき作品はバロックの巨匠カラヴァッジョの《洗礼者ヨハネ》です。波乱に富んだ人生をわずか38歳で閉じたカラヴァッジョが没して今年は400年です。彼は光と影によって人の内面を鋭くそして劇的に描いています。この絵でも半裸のヨハネに光が当てられて浮かび上がっています。憂いに満ちた表情はそれまでのヨハネ像にはなかったものです。劇的な生涯を送ったカラヴァッジョの劇的な表現の一端を見ることができます。国内
没後400年に当たる今年、映画「カラヴァッジョ -天才画家の光と影」が上映されています。激しい気性で人生の破綻をきたしたカラヴァッジョの伝記映画です。現在、東京・銀座のテアトルシネマで4月9日まで上映されています。残念ながら静岡県内では上映されていないので美術展の帰りに見てくればよかったと後悔しています。
ラファエロ、カラヴァッジョのほかにはボッティチェリ、ヴェロネーゼ、ベルニーニなどの作品もあります。
《一角獣を抱く貴婦人》をはじめ出品されているいくつかの作品は近年になって作者が判明したり、修復によって原画が回復されたりしています。作者の特定が困難な作品もあり、今後さらに研究が続くことになりそうです。
出品されている多くの絵には白百合、薔薇、犬、羊、杖など様々な動植物や道具が登場します。これらはほとんどが「アトリビュート」と呼ばれるもので属性を表す物です。美術用語では「持物(じぶつ)」と呼ぶのだそうです。ヴィーナスならば薔薇、ペテロならば鍵がその人物を特定し、象徴する物体です。西洋絵画独特の約束事ですがなかなかなじめません。
この展覧会は東京都美術館で4月4日まで開催されています。
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去年の秋に新国立美術館「ハプスブルグ展」へ行って以来の美術展鑑賞
(ハプスブルグ展の記事はこちら⇒http://blog.goo.ne.jp/hi-lite2974/e/bd108f263e4ae0dca63fab0e6bf30f59)
「ボルゲーゼ美術館展」http://www.borghese2010.jp/
ひとつひとつの作品、みな凄いンですが…
なんだろう?
公式サイトに載ってるボルゲーゼ美術館の写真をみると、本物のボルゲーゼ美術館で観たいって感じです。
ボルゲーゼ... [続きを読む]
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