優れた企画の「朝鮮王朝の絵画と日本」展:静岡県立美術館
綿密に企画された内容の濃い企画展でした。1392年の太祖李成桂に始まる朝鮮王朝の絵画が日本の絵画に大きな影響を与えたことがよくわかります。
展覧会のサブタイトルは「宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美」。第1室ではこれらの画家が朝鮮の絵画を模写して学んだことが示されています。題材は虎・葡萄・狗や山水画などです。若冲が模写した《猛虎図》(プライスコレクション)は京都・正伝寺に伝わる《虎図》正確に写したものであることがわかります。
静岡県立美術館所蔵の若冲《樹花鳥獣図屏風》や《白象群獣図》はいずれも「桝目描」という独特の手法で描かれていますが、この手法は朝鮮特有の紙織画に想を得た可能性が指摘されています。
与謝蕪村の《狗子図》や宗達の描く犬などにも朝鮮絵画の影響が見られます。
作品が出品されている日本の画家は、宗達、大雅、若冲、蕪村のほかに雪舟、狩野探幽、狩野山雪、英一蝶、白隠、葛飾北斎、鳥井清信、海北友松、浦上玉堂、谷文晃などです。
展覧会の構成は次のようになっています。出品作品は約130点で、期間中にかなりの作品が展示替えになります。
第1部 朝鮮絵画の精華
第1章 朝鮮絵画の流れ:山水画を中心に 前期・中期・後期
第2章 仏画の美 高麗から朝鮮王朝へ
第3章 絵画と工芸、越境する花鳥の美
第4章 「民画」誕生
第2部 日本人のまなざし
第5章 交流の形-朝鮮通信使の果たした役割
第6章 日本画家のまなざし-日本絵画に与えた影響
朝鮮絵画の歴史が系統的に理解できるようになっています。李氏朝鮮というと青磁・白磁を思い浮かべますが、それは朝鮮の美術の一部であって、絵画にも優れた作品のあることがよくわかります。
この展覧会は栃木県立美術館を経て静岡へ。この後仙台市博物館から岡山県立美術館へ巡回します。
静岡での会期は3月29日までです。
主な作品は美術館のHPで見ることができます。http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/
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