映画「おくりびと」
この秋一番の話題作を公開3週目でようやく見てきました。
‘おくりびと’=納棺師という職業についた主人公・大悟(本木雅弘)を通じて、職業観、親子・夫婦・友人などの様々な人間関係や生き方が描かれます。
納棺師は葬儀の前に亡くなった人の遺体を清め、衣裳を整え、化粧をして棺に納める仕事をします。
大悟はオーケストラのチェロ奏者でしたが、オーケストラが解散したために失職し、勘違いから就職したのが納棺師でした。この仕事のことは妻(広末涼子)にも言えず、同級生からは軽蔑されて悩む大悟ですが、様々な死と出会ってこの仕事を続けていく決意を固めます。
一人の人の死にはそれぞれドラマがあり、納棺の場でその人の生き様や人間関係が明らかになってきます。
大悟自身も両親は幼時に離婚、その後父親は行方知れず、父親の顔もわからないという人生を送っています。人知れず一人寂しく死んでいったその父親を大悟が自ら棺に納めるところで映画は終わります。
本木雅弘は納棺師の仕事をみごとに演じています。反吐を吐くほど嫌悪したこの仕事に生き甲斐を感じて定着していくプロセスが自然に描かれています。納棺に至る一連の作業の手つきも鮮やかです。チェリストとしての演奏も、ベートーベンの第九、アベマリアなど指使いや運弓も自然で‘名演’でした。
存在感抜群なのは大悟を雇った社長で納棺師の師匠でもある山崎努です。
銭湯の常連客で火葬場の職員を演じる笹野高史もさすがです。
映画の舞台は山形県酒田市。秋から春までの風景が美しい。雪をいただいた山は鳥海山や羽黒山でしょうか。
余談ですが、遺体の役を演じるエキストラを探すのが大変だったそうです。いっさい動いてはいけないわけですから全く演技をしないでひたすらじっとしている。200人の中から微動だにしない女性が選ばれたそうです。人形やCGも使われているようですがなかなかよくできています。
もう一つ・・エンドロールの背景は納棺のシーンです。大悟が手がけているのは母親の遺体だということです。
涙と少しの笑いとそしていくつかの感動のあるいい映画でした。
サンストリート浜北 TOHO Cinemas 130分 観客約40人
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